この間デルタさんや遺伝アルゴリズムさんに研究室でやっていることを聞かれたのでちょっと紹介しておきます。


私の研究室での研究対象はいわゆる「モータータンパク質」というものです。
「タンパク質」とは一般にアミノ酸が多く連なって立体構造をとった大きな分子なのですが、それぞれが多様な構造を持ち、多様な「能力」を持っています。モノによっては化学反応を助けたり体を作ったりするのですが、モータータンパク質は自身が反応しながら素早く動きます。主なものは
・キネシン
・ダイニン
・アクチン
の3種類で、キネシンとダイニンは二足歩行めいた動きをし、アクチンは手繰り寄せる手めいた動きをします。それぞれ細胞内のあちこちで活躍しており、キネシン・ダイニンは小胞輸送や細胞分裂での細胞質や染色体の移動、アクチンは主に筋肉の収縮に使われています。キネシンやダイニン、アクチンの中にも細かい種類が何百何千とあります。
私がこれから1,2年程度かけて研究するのは3種のモーターのうち「キネシン」になるでしょう。その中でも細胞分裂に関わる種を重点的に研究する予定です。
このキネシンがどのように細胞分裂を助けているのかはよく分かってはいないのですが、人為的に欠損させると上手く分裂しないことから何か重要な役割を持っていることは明らかです。

早速キネシンが動いているところを顕微鏡で見てみよう!といきたいところですが、タンパク質は非常にデリケートな存在で、冷凍・冷蔵保存しておくことがほとんどできません。したがってその都度収集しなくてはならないのです。

この研究のためにイギリスの研究室から特定のキネシンや標識になるタンパク質を発現させるプラスミド(DNAの断片のようなもの)を送っていただいたので、まずはそれを手ごろな大腸菌のDNA鎖に埋め込み、大腸菌にキネシンを発現させてもらいます。その大腸菌をタンパク質が壊れない程度にバラバラにして、残骸の中からキネシンを取り出して初めて観測が始められます。
実はまだ観測が始められてすらおらず、配属から一月ちょっとの間、遺伝子組み換え大腸菌を培養しては潰し培養しては潰しを繰り返しているところです。大分精度もよく精製できるようになってきたので、近いうちに顕微鏡の下でキネシンを動かせるようになりそうです。




こういう変な時間の日記は大抵大腸菌を培養したり、精製を待ったりする時間に描いているわけですね!



トレードリスト更新。
http://shiosainouta.diarynote.jp/201110241615112347/

コメント

safu
2011年10月26日0:35

なにやら難しそうな研究ですね。(^q^)
筋肉の所の勉強で名前だけアクチン-ミオシンで見たことありますわ。

デルタ
2011年10月26日1:34

なるほど~
細胞培養は中々大変だと聞いてますが、頑張ってください!

四日市
2011年10月26日17:20

はじめまして。

《研究室の偏執狂》の話かと思って見てみたらリアル研究の話だった・・・
自分も研究の合間にDN見たりコメントしたりしてますw

前からちょくちょく見させて頂いていたので、これを機にリンクさせて頂きました。

汐宮キャロル
2011年10月26日23:26

>safusukeさん
難しいっていうより疲れますw
最初のひと月のうちに何度試薬を冷凍庫に戻すのを忘れたか、換気扇を切り忘れたか…

>デルタさん
>四日市さん
リンクありがとうございます。
研究者プレイヤー飲みって一度やってみたいんですが…
カードの話と自分の研究の話とドラフトをするっていう。

遺伝アルゴリズム
遺伝アルゴリズム
2011年10月26日23:57

実験がデリケートそうで大変ですね。
しかし、その積み重ねが意外な発見につながるんでしょうね。

おれもくそデッキの構築を積み重ねますかねww

汐宮キャロル
2011年10月27日14:26

>遺伝アルゴリズムさん
今日先生と話したところ、同じ実験を何度もやる、というのが大事だそうで。
マジックって研究生活に似てますよね あれって実際研究だと思います。
その意味で研究室ライフはすごく楽しんでいますよ!

蒼穹
2011年10月27日22:25

漫画から来ました。応援してます。
関係ないですが、勝手にリンクしました。すみません。

お気に入り日記の更新

最新のコメント

日記内を検索