【ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章】

この記事はジョジョ全巻を枕元の本棚に置き、気が向けば読み返すレベルの人間の感想であることを留意してほしい。
もちろんテレビアニメも全部視聴済みだ。

この映画で真っ先に語るべきはスタンドの描写がどれも本当に美しいことだ。
スタンドバトルについて特に気に入った2点をピックアップして書いておく。


1:スタンドバトルではほとんどスローモーションを使っていない

この映画では、アニメや漫画であるような「時間のデフォルメ」がほとんど行われていない。一瞬の攻撃の間に、スタンド使いが数コマ(アニメで言うと10秒ほど)にわたって独白するやつだ。それがないため、この映画ではリアルタイムのハイスピードなスタンドバトルを観ることができるのだ。
「スタンドバトルが高速で、観ていて何やってるのかわからない」という評を受けているほどであったが、コアなファンに言わせれば「あ、スタンドに目覚めて間もない人にはよく"見え"ないか~~~」って感じである。あちこちで言われている通り、ジョジョ原作のファンが観て楽しむため(だけ)の映画であるのは間違いない。

それに伴い、スタンドの強さの描写が大きく変わっていると感じた。
特にアクアネックレスは小型で回避能力が高く、ツバメのような速度で狭い室内を飛び回り、標的の口を狙う凶悪なスタンドとしての側面が強調されていて素晴らしかった。
バッド・カンパニーの銃弾もちゃんと銃弾らしい速度で飛び、実体を持つ兵器のような爆発音や破壊音をあげるため、原作以上に攻撃的なスタンドに仕上がっている。それに伴いクレイジーダイヤモンドのラッシュもとんでもないスピードと迫力になっている。


2:1に伴うバフやナーフに対する改変が適宜に行われている

実写版のアクアネックレスは、漫画版とやることが同じであっても非常に強そうに見えてしまう。それに伴い、原作にあったアンジェロのちょっとコミカルな描写が大幅に減り、本当に恐ろしい猟奇殺人者のような描写になっていた。その一方で、形兆には敵わないことをしっかり印象付ける(ラスボスより強い中ボスになってしまう現象を防ぐ)ために、映画オリジナルの形兆とアンジェロの食事シーンが追加されているのも素晴らしかった。

また、バッド・カンパニーは遠隔操作スタンドから自動追跡型(ただし射程は短い)にナーフされていた。
原作のままの設定だとあまりに強すぎて、仗助が勝つ映像に説得力を持たせられないので妥当な改変と思う。さらにそれに合わせて形兆のキャラクターも「マッチョな兄貴」から「ちょっと神経質な感じのお兄様」になっていたのも「スタンドは本体の心の発現」という原作精神を正しく汲んでいる。


減点部分はスタンドバトルをしていないシーン全体だ。特に演技や衣装がキャラによってマンガっぽかったりリアル志向だったりと一貫しないことや、街の遠景が日本っぽくないのに街中は日本なせいで嘘臭くなっている点は良くなかった。(例えば康一くんは見た目は「実際にいたらこんな風」というキャストだった割に、演技が漫画っぽすぎて残念だった。)

スタンドバトルを観るためだけの映画と言ってしまえばそれまでだが、その分スタンドバトルの完成度はかなり高いので、機会があればスタンドバトルシーンだけでも観てほしい。

“三人組”といったらどういう3人をイメージするだろうか。
あるいは、映画やアニメやゲームに出てくる3人組はどういうものが好きだろうか。

3人組キャラのデザインには大きく分けて2つの方向性があると思っている。

その1  3人が全員同じ属性の「東方の三賢者型」
マジックで言うと《ヴェンディリオン三人衆》、ガンダムで言うと《黒い三連星》のように、3人(機)がほとんど同規格の三人組だ。同一規格が3人揃うことで作中での存在感を発揮できるだろう。


その2  3人がバラバラの方向性の「運命の三女神型」
マジックで言うとナヒリ・ウギン・ソリンと言ったところか(マジックにおいてバラバラの方向性のキャラのグループは大体5枚サイクルにされるので好例が少ない)。ガンダムで言うとSEEDのフォビドゥン・カラミティ・レイダーガンダムだ。あるいは迫真空手部の三人組だ。3人がそれぞれキャラ付けされているので見ていて飽きないだろう。


そして、その1.5とも言うべき、「三銃士型」も定義しておきたい。
共通規格や共通点を多く持ちつつ、個々が独自色を持っているパターンだ。
マジックで言うとエムラクール・ウラモグ・コジレックが代表例だろう。ガンダムで言うとOOのスローネ3機だ。
3人の”サイクル”を強く意識させつつも、それぞれの長所や出番、物語を楽しむことができる、物語における最強パターン候補と言っても良い。(私はこれが一番好きだ)


前置きが長くなったが、映画【ドリーム】は一見「その1」の「東方の三賢者型」だが、見る人が見れば「その1.5」の「三銃士型」として最高の物語を紡いでいることがわかるのだ。
映画全体の大テーマは「知の力で黒人差別に打ち勝つ」なのだが、【ドリーム】はそれを「三賢者型」の3人それぞれの人生でしつこく繰り返すだけの薄い映画ではない。
この映画は大テーマに加え、3人それぞれに黒人かどうかに関係ないサブテーマが盛り込まれているのだ。


【ドリーム(原題:Hidden figure)】 ネタバレ少なめ

ストーリーは史実に基づいており、ソ連との宇宙開発競争時のNASA職員の黒人女性3人(3人とも数学めちゃくちゃできる)が黒人差別に打ち勝ち、宇宙開発を助けて無事アメリカの成功に導く、という物語だ。

皆、「黒人で、女性で、数学ができる」という共通項を持っている。
3人はそれぞれの部署で黒人差別(それも害意なく行われるのが恐ろしい。悪意のはけ口として、悪いことをしているという自覚を持った迫害というより、完全に偏見・因習なのだ。)により不当に低い扱いをされてしまう。
それぞれの部署は1人は飛行軌道計算、1人はエンジン設計、1人は計算全般だ。

私は日本の最多数民族の日本人で、男性なので、【ドリーム】の3人のような差別を受けている立場にはない。
では、彼女たちに感情移入できず一方的に加害者側にまとめられ、映画館で謂れのない説教をされて終わるかといえばそうではない。

3人の持つ独自のテーマは、3つとも現代日本で応用数学をする者にも当てはまる課題なのだ。

◆サブテーマ1
飛行軌道計算のキャサリンのサブテーマは、「物理・工学系による数学徒の軽視」だ。
キャサリンは他の飛行軌道計算メンバー(物理・工学系)の計算をチェックする係なのだが、彼女はただの”チェックした”というアリバイ要因程度の扱いを受けてしまう。
彼女の部署の他の人々はロケットを飛ばす計算は物理・工学徒にしかできないと本気で信じているのだ。

計画における彼女の重要性が認められるきっかけとして、他のメンバーが「この微分方程式さえ解ければ…」と頭を悩ませる中、キャサリンがオイラー法(微分方程式の解を近似的に求める手法。ロケットが飛びさえすれば良いので、微分方程式を厳密に解く必要はないのだ)を用いて数値解を求め、皆が驚く、というシーンがある。

現代に数学を学ぶものの視点からすれば、NASAの高学歴が揃ってキャサリン以外は皆が皆解析解を出すことしか考えることができないのは正直ヤバいし、私ならそんな人間のロケットには絶対乗りたくない(実際に作中の宇宙飛行士も終盤「キャサリンによる検算が終わるまで飛ばない」と語る)のだが、応用数学を軽視する彼らならありえなくもないのだろう。
しかもその後(人種差別が非合理であることはわかったあとも)も大して反省せずに”ただの計算手”のキャサリンの名前を報告書に載せなかったり会議に同席させなかったりする始末だ。
しかしキャサリンは粘り強く力を発揮し続け、最終的に、彼女は数学自体の宇宙計画における重要性をNASAに示したのだ。


◆サブテーマ2
エンジン設計担当のメアリーのサブテーマは、「政治参加との戦い」だ。
彼女の夫は黒人の人権を獲得するために戦い続ける運動家だ。メアリーや子供たちにも政治運動への参加を求めるが、彼女は自身の研究を優先したいために夫婦に不和が生じる。
メアリーは自身の就学のためには法廷闘争をする(彼女が行きたかったのは白人しか入学が認められていない学校だった)が、決して人権運動には寄与しない。
「(黒人のメアリーは)夜間のみの就学を認める」という非常に差別的な判決を受けても、自身が学べるようになる喜びで笑う彼女が象徴的だった。
同胞のために戦わない政治的無関心を責める者がいるが、メアリーは人種の自由のために戦うことよも価値を感じるものを選んだのだ。

◆サブテーマ3
計算室のリーダーだったドロシーのサブテーマは、「組織内の権力闘争」だ。特に「経理の小奇麗なインテリVS現場の技術者たち」だ。
ドロシーは計算室の待遇を改善するために、計算室の他の黒人女性たち(有色人種の計算室が分けられていたので、ドロシーの部下は全員有色人種だ)とIBM(当時の最先端コンピュータ)の操作を学び、それを武器に立場の改善要求を通したのだった。
非技術者出身の管理職が、なぜか実際にモノを作るのに不可欠な技術者を下に見て支配している構造は日本にも多いようだ。

どうだろうか。
何かしら身に覚えのあるテーマがあるのではないだろうか。

この映画は痛快なストーリー及び女優の名演、音楽が素晴らしく、それだけでも観る価値がある。加えて、あなた自身が応用数理に携わっているのならあなた自身が当事者である問題が描かれている「あなたのための映画」であるだろう。

久しぶりのDNは、スティーブンキング的「少年の夏の日」映画を2本まとめて語ることにした。

ITは若干ネタバレがあるかも…

【IT / イット “それ”が見えたら、終わり。】(未見者向け)
【スタンド・バイ・ミー】

ITは元はスティーブン・キングの小説で、1990年にも映像化されて殺人ピエロというコンテンツを世に広めた立役者だったらしい。
私が観たのは2017年のリメイク版だ。

そもそも、ITをホラー映画の括りにいれてよいかどうかは非常に難しいと思っていて、(この言及自体すでにかなりのネタバレになってしまうのだが)メインに据えられているのは恐怖現象ではなく、恐怖に立ち向かう少年達の冒険と成長なのだ。

クールな殺人鬼がユニークな殺し方するのを見るゾ~~!っていう気持ちで映画館に行くと、大きく期待を裏切られることになる。その衝撃を映画館で味わって欲しいという思いと、凡百のホラーではないから是非期待して観にいって欲しいという思いとがあったため、どのような日記を書くかかなり迷ってしまった。
そして、結果として後者を選ぶことにした。
(もちろん、ホラー映画として観ても完成度は高く、期待していたような猟奇殺人を見ることはできた。ただ、少年達の成長や悩みに関するシーンにも尺が裂かれていて、全編恐怖映像というわけではない。それがかえって怖さを引き立てる気もする。(恐怖には鮮度がある理論))


予告編で伝わるとおり、物語は子供のみを標的とする殺人ピエロ「ペニーワイズ」が田舎町(の子供たち)を恐怖に陥れるところからスタートする。
ペニーワイズは標的をすぐには殺さず、何度も目の前に現れて恐怖を与え続け、弄ぶように殺しを行うのだ。
ペニーワイズを恐れる少年達は大人たちの手を借りられず(大人にはペニーワイズが見えない)、自分達のみでペニーワイズに対峙する。
その過程で、個々人の抱える問題にも立ち向かい、人間的にも成長していく(この辺りはスタンド・バイ・ミーと同じだ)。

任天堂のRPG,MOTHERシリーズの糸井重里氏はスティーブンキングの小説に影響を受けたそうだが、ITもまた非常にMOTHERらしい映画だった。
いうなれば、超怖いMOTHER2というところだ。
もちろんTVゲームのRPGが登場するより前の時代の原作なのだが、ITは良い意味で非常にRPGっぽい。
少年に信頼できる同年代の仲間ができ、共に冒険をするのだ。

私は1988年生まれだが、小学生の頃にRPGにめぐり合えてよかったと思う。
仲間と旅に出ることへの憧れを教えてくれたのはMOTHER2やFF7だったが、その憧れが今の人生(仕事・プライベート)を豊かにしていることは間違いない。

成人してからITやスタンド・バイ・ミーを観て、少年の夏の日に戻れないことを悔やんで欝になる可能性は間違いなく存在する。
ただ、実際には大人になって友人と冒険の旅ができないなんていうことは決してない。現に私は気心知れた友人とひたすら街を歩き続けるという余暇を楽しんでいる。それもキャッスルロックやデリー(スティーブンキングの世界にある架空のアメリカの田舎町)やオネットやツーソン(MOTHER2版のそれ)のような田舎町でなく、新宿や銀座や丸の内や豊洲という都会である。
少年の夏の日に戻れないことを悔やんで欝になる前に、”こういう旅でのみ得られる友情と成長がある”ということ、そして”旅は田舎だけのものじゃないし、少年だけのものじゃない”ということを知ってほしいということを言っておく。

このブログを読んでいる人の多くはマジックプレイヤーであり、休日に遊ぶ価値観の合う仲間は同年代の人より多いはずだ。
欝になることを恐れずに、是非ITとスタンド・バイ・ミーを今一度観てほしい。きっと休日が今まで以上に輝くだろう。


【スタンド・バイ・ミー】

原作は既読だったが、映画は今の今まで観ていなかった。
私をよく知る人間にこのことを伝える度にとんでもなく驚かれていた。
美少年及び美少年同士の友情が大好きで、映画も好きなら絶対観ているだろうという類推なのだろう。
原作を読んでとても気に入ったと同時に、今見ると「少年の夏の日に戻れない欝」に罹患するのではないかという恐怖があり、ずっと観られないでいたのだ。

ITのレビュー(と言う名の自分語り)に書いた通り、ここ2年位友達と街歩きをしているわけだが、先週末には良い旅が連続的に訪れたので満を持して視聴に踏み切ったのだ。
子役の演技も脚本のテンポもカメラワークも音楽も細かいシーンの描写も本当に素晴らしく、原作以上の破壊力があり「あ、これエモすぎる…観るタイミングによっては死んでた…」という感じだったので一命を取り留めたと言える。
詳しい感想は後日書くことにしよう。

ただ、読者の皆さんには「エモさの急性中毒死」に本当に気をつけて視聴していただきたい。
特に1988年前後生まれの成人男性の方はショック死する危険性があるから、【ファイト・クラブ】を先に観ておいた方がいい。
【アイアムアヒーロー】
ストーリーは原作と同じ(ショッピングモール脱出まで)なので、割愛。
日本のゾンビ映画を観たのは初めてだったが、これはかなり良くできていた。
ゾンビは僕が好きな走るタイプ、しかも生前の行動をトレースするタイプで、この時点で高得点を上げてしまいたい。
映画自体もゾンビコメディやパロディに逃げない正統派ゾンビ映画なのも、良くぞ日本を舞台に撮ってくれたと感謝したい。

何より良いのは、その走るゾンビが日本の密集した住宅街に発生して瞬く間に感染拡大していくシーンだった。日本の住宅街を走るゾンビが駆け回るシーンは後にも先にもなさそうだ。
富士の樹海は日本らしい森林で、腐敗の仕方も湿度の高い日本に準拠した傷み方で、西洋のゾンビ映画とは少し違ってユニークだった。

その一方後半のショッピングモールの戦いは(ストーリー上では主人公がヒーローになる大事なシーンであるのだが)他のゾンビ映画でも見られる少々凡庸なものだった。
ただ、そのシーンも非常に迫力ある映像だし、英雄役の演技もかなり上手かったのであまり退屈しなかった。


【スラムドッグ$ミリオネア】
ダニーボイル監督の映画。

Amazonプライムで無料で見られたので、気になっていた作品を。
インドのスラム出身の電話通信士がクイズ・ミリオネア(インド版)に出場して決勝まで勝ち進むものの、その出生から不正を疑われてしまうところから映画がスタートする。

いかにしてクイズの答えを知っていたかを過酷なスラムでの人生を振り返りながら語るのだが、それぞれのエピソードが連続していて非常に熱く、かつクイズで回答するシーンも(視聴者は主人公が決勝まで進むと言う結果を知っていながらも)白熱する。

ストーリーのテンポのよさと、現在とリンクする回想シーンが非常に良くできていて、回想が終わり現在(決勝前に主人公が捕まるところ)に戻ってから最終クイズに臨むシーンがすごく気に入った。


【ズートピア】

ディズニー映画は好きな映画と嫌いな映画の幅がかなり広くて、ウォーリーは正直酷いと思った反面、シュガーラッシュやカーズはかなり楽しんだ。
ズートピアはどっちサイドか不安だったのだけど、予告編のうさぎとキツネが可愛かったのと他に観るのが特に無かったのとで観にいった。

動物は皆擬人化されているのだが、ウォーリーと違って人間は登場しないので「獣ごときが人間の真似事か!」とキレる事態(http://shiosainouta.diarynote.jp/201508061553264906/ 参照)にはならなかったし、動物の大きさを忠実に守っているのもとても良かった。そして体格差でトラブルが発生したりする様子も、なかなか世界設定が練られていると思った。

警察になったジュディ(うさぎ)が詐欺師のニック(キツネ)と組んで事件を解決するのがストーリーのメインだったのだが、その事件もアクションも結構本格的なバディもので面白かった。

以下、若干ネタバレ。















作品のテーマは「多様性」の共存であり、草食動物と肉食動物を使って全編を通じてそれが主張されている。

ただ、物語の最後で詐欺師だったニックがジュディと同じ警察官になる後日談がついてくるのだが、コレが完璧に蛇足だったと思う。草食動物と肉食動物の多様性は認めるものの、アウトローの生き方や出世や成り上がりを目指さない生き方は認められない「多様性」になってしまった。
生まれ持った性質の多様性は認めるものの、幸せの形や生き方の多様性はあまりフォローが無いようだ。非常にアメリカらしい価値観だとも思う。

不満点は最後のオチだけだったので、映画としては95パーセント以上の時間を楽しめてなかなか満足であった。



【キル・ビル】
タランティーノ監督のアクション映画。
ヘイトフル・エイトやジャンゴもかなり楽しい映画なんだけど、キル・ビルはさらに楽しさを突き詰めたような映画だった。
日本刀を構えた主人公に、ボスの「やっちまえ!」の声で刀を持った手下達が襲い掛かってくる、といった時代劇的な様式美を備えながらも、その出で立ちは黒スーツにマスクだったり、ブレザーの女子高生暗殺者「GoGo夕張」が登場したりと日本のサブカルっぽさも取り入れている。
そもそも回想シーンが唐突にアニメになるし。
加えてシルエットになって殺陣を演じたり、噴水のように血が噴き出したりする映像の美しさもある。

以上の怪しい日本風のシーンは戦いの場が東京だからであり、アメリカでの戦いのシーンはアメリカのスパイ映画らしいナイフアクションを演じている。

タランティーノらしく章に分かれてるんだけど、どの章もその舞台に合わせて作風を変えてきているのが本当に楽しかった。


【キャロル】【激突】
近いうちに書く。
キャロルは昨年度自分の中では最高に近い映画だったと思う。


【オデッセイ】

大まかなストーリーは火星に取り残されたマット・デイモンが次に火星探査船が来て救出されるのを待つ、といったストーリー。
小説原作で、映画より原作を推す声も良く聞くし、確かに映画ではテンポを優先して説明不足(というか気になるところ)が多いとは思った。
ただ(細かい理由はネタバレになるので後述するが)映画も映画で非常に面白く、是非観にいって欲しい。

プライベートライアン然り、助けに行く相手のキャストがマット・デイモンなのが本当に良い。誠実そうな顔と、諦めて投げ出さない性格の演技とでどうにかして助けてやりたくなる気持ちが湧いてくる。

以下、若干ネタバレ。














火星に一人ぼっちで生存、と聞いてキャストアウェイを想像したが、キャストアウェイパートは地球と連絡が取れることで早々に終了し、後半は地球からなんとか助けに行く策を練るプライベート・ライアンパートが始まる。
持ち合わせた知識と道具で土と水を作ってジャガイモを育てるシーンは中々興味深く、キャストアウェイパートをもう少し観ていたい気もしたが、地上の若い物理学者が理論で救援作戦を立案するシーンはかなり格好良くて好きなシーンだった。

上官が助けに行くな、というのに現場の部下が独断で助けに行くシーンはいかにもアメリカ映画的で正直茶番感が強かったがアメリカの観客的には喜ばれるのだろうか?
ただ、後半のその箇所を除けば最後の救出はかなり感動的に描写されていてかなり熱中してみていたと記憶している。

上にも書いたが、主人公の諦めない姿勢と悲しみと苛立ちと希望とがとてもよく演じられていて、最後に助かって地上にいる主人公を見られたときは本当に心から安心できた。

プライベート・ライアンのときもマット・デイモンが演じるライアンは一目で誠実で熱心な若い兵士だと分かって、主人公チームが犠牲を出しつつライアンに会いに来たときには報われた感じがしたし、本当にこういう役が天職なんだと思う。

原作ではおそらく補われているであろうが映画では尺の都合かサラッと流されていた気になったシーンは
・中国の宇宙開発局の長官があんなに簡単に協力できるものなのか?
・食糧輸送ロケットのチェック、どんなに急いでいてもやるべきでは?チェックをしているとどのみち次の発射チャンスを逃す、とかいう状況だったのだろうか?
・火星探査船のパイロットが上官に背いて独断で火星に引き返すシーン、あんなこと物理的・道義的にできるものなのか?その場で計算しなおして簡単に航路を変えられるものなのか?
・火星の荒原の中でどうやってマーズパスファインダーを見つけたのか?(金属探知機的なもので見つけられるのだろうか)

あたりがあった。
暇があったら読もうと思う
【ヘイトフル・エイト】

タランティーノ監督の最新作西部劇。ネタバレなし。

西部開拓時代の映画、所謂西部劇だが、よくイメージされる砂嵐の中でタンブルウィードが転がっている季節ではなく吹雪の中が舞台。密室ミステリーのように雪で閉ざされた小屋に8人の男女が集まり、殺人事件が起こるという西部劇らしからぬものとのハイブリッド型の作品だ。荒野を駆けないのに西部劇要素が残るのか、という心配もあったが、会話や時代背景にそれらしさが出ていたのでただの密室ミステリーに終わることはなかった。

3時間もある映画で、(ミステリーなので)会話が多いのに退屈させない映画だったのは、ひとつの要因は台詞回しが上手いからであり、もう一つは最初から密室で殺人が起こる、という触れ込みだったからだと思う。登場人物が皆ならず者で、彼らの関係は非常に険悪で、誰と誰が殺し合いを始めてもおかしくない会話内容で、いつどっちかがキレて殺人が始まるのかヒヤヒヤしながら映画を見ることになり、会話シーンも一切気が休まらない映画だった。

加えて視線誘導やテンポのよさもあり、観ていて長さがまったく苦痛にならないように作られていると感じた。
R-18というだけあって全体的にグロいし景気よく殺人が行われるので見る人を選ぶとは思うけどとにかく全編楽しいので人によってはオススメ。
まず【ジャンゴ 繋がれざる者】を見て作風を予習しておくと良いかもしれない。
ジャンゴの方が若干マイルドだったような気がする。
でもどちらかといえばヘイトフル・エイトの方が好きだったよ。
【キングスマン】
英国紳士のスパイがアメリカの成金テロリストとバトルする映画。
予告編で伝わるスタイリッシュアクションの雰囲気がそのまま作中でも漂っている。
僕自身がスパイアクションも英国紳士もスーツの男性のアクションも好きだからってのもあるけど、ものすごくお勧め。

ただ、前回のピクセルはここを読んでるであろうゲーム好きのマジックプレイヤー全員に勧められるけど、今回のは結構キャラや雰囲気がウリなところあるので予告編を観て気に入るのを確認してから見に行くのをお勧めしたい。

以下若干のネタバレ含む感想
















スタイリッシュアクションシーンもすごく良かったんだけど、母親と息子の関係も本当に熱かった。
キングスマンだった父親が殉職した時にエグジーにメダルが渡って、母親がチンピラと再婚して、エグジーが10数年後ガラハッド(ハリー)に助けられてキングスマンに入って世界を救い、最後に母親の元に戻って自分がガラハッドに助けられたように母親を助けるシーンは本当に良い。

成長した子供がスーツ姿の紳士になって戻ってくるってのもスパイじゃない我々の日常にも重なる感じがする。
エグジーがそんなにスーツ似合ってないのも「なりたての紳士」っていうコンセプトにあっていてかえって良いのではないだろうか?

他のお気に入りのシーンは教会乱闘と冒頭の山小屋での戦闘。
とにかく乱闘シーンがスタイリッシュで、他のアクション映画と比べても際立って美しかったと思う。
最近はジャイアントロボOVAやらファイトクラブブルーレイやら、あるいは久しぶりに漫画かいてたりバイトだったりで映画をあまり観てなかった。昨日久しぶりに映画館に行ったので日記に。

今回は公式サイトでわかる範疇でしかネタバレしていない。


【ピクセル】

結論から言うと本当に観てよかった。
「映画館で観る分には映画だよ」っていう勧め方される映画が本当に好きじゃなく、これもその類かとおもっていたんだけどこれに関してはブルーレイで観ても面白いと思う。
でも大画面映えするから2000円前後払ってでも映画館で観ることをお勧めしたい。

ドットゲーム風の敵が街に現れて人を襲うCMや駅の広告が話題になったときに、「なんと!ゲームが実体を持っちゃった!」的な適当シナリオの懐古趣味の映画かと思ってたんだけど、実際はもう少ししっかりした設定だった。

地球外生命体へのメッセージに地球の文化として当時のビデオゲーム大会の映像を乗せた結果、メッセージを受信した宇宙人がそれを挑戦だと受け取ってしまい、ドットゲームのキャラを模した兵器で地球人相手にゲームを挑んでくる。

宇宙人の技術だと地球を滅ぼすのはたやすいらしいのだが、宇宙人が仕掛けてきているのはあくまでゲームであり、元のゲームのルールに従っているため地球人にも勝機はあるのだ。
なお1/1スケールのゲームなので、街は巻き添えで破壊される。

ドットゲームが出た当時子供だったおっさん達が人類側チームとして挑むのだが、みんないい具合にダメな成人になってるのが素晴らしかった。
特に陰謀論者のオタクになった「ワンダー・ボーイ」が良い。

ジョークもセンスが良く、設定も面白く、映像も楽しい素晴らしい映画だったと思う。
ハリウッド映画によくある、「幼少期のセリフが伏線になってて、後にかっこいいシチュエーションでもう一度それを言う」系のシーンを包み隠さず連発してくるのだが、この映画に関しては一周回ってそれが良かった。

まだやってるから是非見に行こう!




マジックの映画がどういうのになるのか一切情報出てないけど、ピクセルを見る限り「現実世界でマジックやってる奴らに火花が宿り、地球にプレインズウォークしてきた悪と戦う」みたいなストーリーでも案外いけるのかな、って思い始めた。

イメージとしてはデュエルズ2013のCM。
https://youtu.be/G6esiAwJl-4
帰省の新幹線内で読んだ。

かなり好きなんだけど、小説版だとタイラーがどんな奴なのかいまいち分からないので映画から入った方が良いと思う。
結構原作と違い、小説の方が好きなシーンも結構あるので書いてみる。

映画のネタバレがあるので観てない人はお控えください。っていうか映画を観よう。









・タイラーと「ぼく」
原作だと(映画に比べて)タイラーは冷静なテロリストという感じが強く、映画のような狂乱ぶりやカリスマ性は薄目になっている。
「ぼく」との対話シーンも少なめで、「ぼく」がタイラーに心酔していてタイラーがいなくなったときに必死に探したり蚊帳の外にされて寂しがったりするあたりのブロマンスっぽさが薄れてはいた。
ただ、マーラにタイラーを奪われた時の内心の恨み言は増えているのでそっちでブロマンスは補充しよう。


・「ぼく」の勤め先の会社
上司の部屋で自分を殴って大騒ぎするシーンは映画独自のものだったようでかなり好きだった。(あれに該当するシーンは主人公の夜のバイト先のレストランであるのだが、映画ほど面白いシーンではない)
ただ、コピー機にファイトクラブの会則を置き忘れて上司に怒られたときに居直るシーンは小説版の方が面白いので是非読んでほしい。その後もコピー機を私用しては嫌そうにする上司が加わっている。


・夜のドライブで運転する(そして事故を起こす)人
映画ではタイラーだけど、原作では「メカニック」っていう別のキャラ。
これは映画のタイラーの方が良かった。


・騒乱計画の目的、獣医学科の学生の話
小説版では反資本主義的な側面、ジェネレーションXの抱える悩みの側面がかなり強調されていて革命家っぽさが際立っていて良かったと思う。
特にタイラーとぼくが獣医学科の学生を銃で脅して勉強させるシーンは絶対に小説の方がいい。小説では「ぼく」が騒乱計画の目的を前向きに受け入れて積極的に動いているのを示すシーンでもあった。

・街中に騒乱計画メンバーがいるシーン
これは映画の方が絶望感強くてよかったと思う。
マーラを引き留めるときに「ぼく」が車道の流れを止める映画のシーンもかなり好きだし、(これは小説にもあるけど)警察に自首したらそこの警官もメンバーだったあたりも絵面的に怖すぎて良い。

・結末
映画では主人公のいるビルも爆破された?みたいなレビューが結構あったし、死を予感させる終わりだったけど、小説では主人公のビルは無事だったようだ。
主人公の述懐も入り、小説の方がやや好きかな。ただ、直前のタイラーとのやり取りの緊迫感は映画の方があったと思う。



媒体の違いをそれぞれ最大限活かすように作られていて、小説もお勧め。
今年出た新訳版の本人後書きも相当面白いので是非買って読もう。
チャック・パラニュークが飛行機に乗って給仕係と話をした後、飲み物をいくら注文しても無料だったって話や、パラニューク自身は「ファイト」のクラブでなく別の男のクラブ活動でも話の一般性は失われないと思っているという話や、「実際のファイトクラブはどこでやっているのか」という問い合わせが殺到した話やら。

【グラディエーター】

ローマ軍・ローマ市民・ローマ帝国辺境地に至るまで非常にリアルな、少なくとも現代人がこれですよ!と言いたくなるローマが描かれていて映像は超良かった。



ローマ軍将軍だったマキシマスは皇帝アウレリウスに傲慢な皇太子コモドゥスを皇帝にせず議会政治に移行したい旨を打ち明けられる。
しかし、そのことを聞いたコモドゥスはアウレリウス帝を殺害し、自身が新たな皇帝になり、マキシマスの処刑を命じる。逃走したマキシマスは奴隷商人に買われ、剣闘士奴隷となる。
比較的シンプルな復讐劇でありながらも単に新たな皇帝を暗殺してハイおしまい、って訳にもいかず、殺された先代の遺志を叶えるべく新皇帝の威光を奪い市民(元老院)のローマに戻す形で敵を討たなくてはならないという制約がついて回る。
中盤でマキシマスがコモドゥス帝を殺そうと思えば殺せる状況になりながらも、より大いなる復讐と雪辱のために溜飲を下げるシーンは非常にもどかしく本当に良かった。
その後も自分に恨みを持っていると分かりながらも、ローマ市民の人気剣闘士であるためマキシマスを処刑も追放もできないコモドゥス帝の様子も非常に良い。

個々のシーンでも好きなところが多く、マキシマスがコロッセオで敵のグラディエーターを倒し、止めを刺すべきか観衆に問う(それがコロッセオの慣わしであり、観衆の意向を組んで皇帝が最終命令を下す)シーンでの

観衆「殺せ!殺せ!殺せ!」

皇帝「よし、殺せ」

マキシマス「殺さない」

観衆「マキシマスは慈悲深い!(大絶賛)」

という衆愚っぷりは映画全体の移ろいやすいローマ市民の心を象徴するかのようなシーンで非常に気に入っている。

とにかくローマの市民や政治の何たるかが分かった気がしてお勧めの映画。

あと皇帝の甥が超かわいいショタ。
夏休みに4泊5日で福岡の実家に帰っていて、その間していたことといえばMOと睡眠と映画のみ。観たものは
【るろうに剣心】
【2001年宇宙の旅】
【グラディエーター】
【ビューティフルマインド】
【フライト】
【ベルリン 天使の詩】

それと【ファイトクラブ】の原作小説。


映画で一番楽しんだのは【ベルリン 天使の詩】で、二番目が【グラディエーター】かな。
【ビューティフルマインド】は文句なく名作だしおもしろかったんだけど、とある事情につき満足度が目減りしてしまった。



【るろうに剣心】

武田観柳の阿片売買を止めるところまでが第一作。
剣心と左之助のアクションが本当にキレがよく乱闘シーンも一騎打ちシーンも非常にスマートだった。
キャストも顔が原作に似てる似てないは別として皆ハマり役でよかったと思う。特に武田観柳は小太りになってたけどすげーよかった。左之助に至っては声も仕草もぴったりで、原作以上に左之助っぽかった。

一方で鵜堂刃衛(映画版では偽抜刀斎の役もこの人)はあまり強そうに見えず、白黒反転目も似合ってなかった。警官隊相手に一騎当千の戦いを見せるシーンはかっこよかったんだけど、一本の映画の最後に主人公と戦う宿敵としては今一つだったと思う。

とにかくアクションがきれいで映画としてのテンポも良いので、特撮が好きなら是非見てほしい。


【ベルリン 天使の詩】

ベルリンの壁崩壊前のドイツ映画。
主人公カシエルはベルリンの街を有史以前から見守り続けた天使なのだが、その姿は戦勝記念塔の天使のような一般的なものではなく、黒いロングコートのおじ様だ。
この世界のルールとして、天使は人間には見えず、物体に作用することもできず、声もかけられない。できることは人間の心の声を聴くことと、人間の肩に手を添えてその人間を少し元気にすることだけだ。また、色が見えないため、天使の視点で観ているシーンはセピア色や白黒で描写される。それと結構数が多く、カシエルが図書館に行くシーンではあちこちに天使がいた(カシエルに気づいて手を振ってくる)。

カシエルは話好きで、人間の世界に惹かれていて、人間に何もしてあげられないのをもどかしく思い、やがて人間になる(永遠の命と天使の能力を失う)ことを考え付く。
カシエルの親友のダミエルは比較的無口であるが、カシエルのことを心配するようでもある。

二人の美中年が黒のロングコートでベルリンを歩くってだけでも大満足な人もいるだろうが、映画全体でベルリンの街並みやカメラワークが美しく、また街で聞こえてくる人間の心の声もどことなくユーモアや切なさがある。

(僕が観たDVDがノーカット版だったのかもしれないが)映画のテンポは悪く、そこいる?って感じのシーンは結構ある。刑事コロンボ(の役者)とヨーロッパのロックバンドが本人役で出演しており、そのシーンが長かったように思えた。特にバンドのライブシーンは元のバンドを知らない人間には楽しめない上にストーリーにあまり関係ない長いシーンとなってしまっている。加えてDVD版ではドイツ語歌詞に字幕がないという不親切さはあった。


ただ、映画全体としては映像や街並みが美しいだけではなく脚本や演技も良く、何度も見返したいシーンが全編にわたって多く、とても満足度の高い映画だった。

今週前半に観たこの2本、とんでもなく良かった。

今回はネタバレなし。
どっちもWikipediaにネタバレがあるので観る前に読んではならない


【戦火の馬】
スピルバーグの戦争(第一次大戦)映画。

ファイトクラブと一緒に借りてきたのだけど、先にファイトクラブを観て人生変わるレベルで感動した後でわざわざ新しく映画見る気が起きないでいたので適当に見ようと思って再生し始めたら30分ほどで作品にのめりこんでいた。

登場人物のキャラ立ちが大げさ(馬が畑を耕せないことに怒り猟銃を持ち出す父親など)なのが少し鼻につくのだけど、純朴で何も語らない馬が戦争の中で懸命に生きてるのが際立つのでアレはアレでアリなのだと思う。
プライベートライアンでも少年漫画のキャラかよってくらい際物キャラ出してたけど、実際戦場に放り込まれても常に眉間にしわ入れてる人間より適度にユーモア残ってる人間の方が生き残りやすいのかもしれない。
人間の描き方はさておき、この映画の主人公は馬で、馬の周りで人が死んだり生きたりしてるんだけどその馬が(少なくとも実物の馬を飼ったことない人間には)本当に自然に見える馬なのが素晴らしかったと思う。
人間でもないのに人間の勝手な想像で人間らしい感情を作りこまれていたら最高に興醒めだったと思うのだけど、さすがはスピルバーグでそんな展開はなかったのでこれから観る人も安心して観てほしい。それでいて馬はある程度賢い動物で、主人公がよく調教していたという設定も活きていて、バカすぎて観客をイライラさせることもないのが良かった。





【ファイト・クラブ】
複数のマジックプレイヤーの友人が絶賛しているので観ようと思っていた作品。

大手勤めのサラリーマンの「ぼく(作中で名前が出ない)」がアウトロー風の石鹸行商人のタイラー(ブラッドピット)と出会い、バーの地下で秘密の殴り合いクラブ「ファイト・クラブ」を立ち上げるところからスタートする。
退屈な仕事から離れて殴り合いをして(むしろ自分を痛めつけるところに価値がある)社会から逸脱し、不眠症その他を改善できるようになっていく。

この映画を好きになるにはまず前半の「ファイト・クラブ」や空き地でのゴルフや男二人暮らしを好感触で受け止めて、タイラーに憧れを持つようにならなきゃならないと思う。
もちろん「ぼく」の昼間の人生との対比でこの映画を見ればある程度誰でも憧れるようには構成されているのだが、やはり実際に「ぼく」に身を重ねられる人間の方がよりこの作品を楽しめるのは間違いない。

しかしここを読んでいる忙しいマジックプレイヤーの多くは楽しめると保証する。
マジック以外の日常(会社勤めや通学、人間関係)に疲れていて週末のマジックが待ち遠しい、ただし大会に出るのでもなく少しでも多くマジックをやりたい、という欲求を叶えてくれる男が現れ、日常を忘れる場を作ってくれるカリスマがタイラーである。

だからこそ、その同好のグループがタイラーの独断でどんどん妙な方向になって行ってしまうのを悲しみ疎外感を味わう「ぼく」の気持ちが痛いほどに伝わるのだ。

実際の映画での殴り合いは「趣味」でありつつも「修行」に近い要素もあるんだけど、とにかく日常や一般的な社会から逸脱したいっていう欲求がこの映画を楽しむうえで重要だと感じた。

加えて、同年代が結婚して家庭持ちだったり体育会系のノリで仲間に囲まれていたりして、自分の人生に少し後ろ暗さを持ち始めている20代中~後半くらいのときに観るのがベストだと思う。

まさに20代後半のマジックプレイヤーが見て楽しむのに最も良い映画と言えると言える。
マジックをしなくて2時間まとまった時間をとれる機会は少ないと思うが、次の水曜夜のMOメンテナンス中にでもぜひ楽しんでほしい。今日が月曜だから今すぐTSUTAYAに走ろう。

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Amazonでもお急ぎ便なら今買っても水曜にはコンビニで受け取れる?




ネタバレありの感想
主人公の成長が作品のテーマであるのだが、30歳男性でそれをやるのがものすごくクールだった。
物語の最後で「ぼく」は最初の不満を抱えた状態からも抜け出し、社会へ暴力を振るいだしたタイラーをも抑えて高い人格に達したのは本当に良かった。悲しいのはタイラーがしでかしたこととはいえ、「ぼく」は成長を社会で発揮することなく隠遁生活、あるいは捕まって死刑になるだろうことだ。
「主人公たちの活躍をもっと見ていたい」と思わせたら名作(そうでなくても名作はあるので逆は真ではない)だと思っているが、その意味でファイトクラブは間違いなく名作だったと思う。
暴走したタイラーへのとどめとなったのが、比較的冷静だったころのタイラーが説いていた自己への暴力だったのもタイラーの良い部分の影響が残っているのを感じられてとても良いと思う。

ただ、冒頭の癌患者の集会から「ぼく」に一貫してある誰かに認めてほしい・理解してほしい欲求に関する伏線回収が結局マーラとの恋愛(相互依存)かよ!ってのはかなり突っ込みたいところではあるんだけど、ほかに回収しようがないよなあ…



追記
http://www.gizmodo.jp/2014/07/_22015.html
主人公あのあと生きてるのかよ!


映画: WALL E

2015年8月6日 映画
設定も好きだし、キャラデザも好きだし、興業的に成功してるのもわかるけど、本当にわずかなすれ違いやかみ合わせの違いで好きになれなかった映画があるとすれば【WALL E】は結構上位。

大まかにいうとピクサーのハートフルロボットアニメで、今回もネタバレあり。






【WALL E】
荒廃した近未来、人間は地球を捨てて巨大な宇宙船での漂流生活を余儀なくされた。
主人公のWALL Eは地球の自律清掃ロボットの最後の生き残りで、ゴキブリしかいない地球でごみを片付け続けている。そこに空から宇宙船が降りてきて、イヴという名の白い流線型のロボットを投下していく。最初はWALL Eはイヴに警戒されているが、しばらくしているうちに仲良くなるわけだけど、彼らの所作は非常に人間的で、まさにディズニー映画の動物のように人間臭くふるまう。WALL Eは頭部の目を上げ下げし、イヴは液晶に目が表示されていて感情を表現する。共に言葉はほとんど話せないためオーバーなアクションで活き活きと演技するのだ。

ここまでだったらなるほど、人間がいない世界でロボットのハートフルなアニメなのか、と思ったのだけど、なんとイヴを送り込んだのは700年前に宇宙に旅立った人間の宇宙船で、地球が再入植可能かを探査する目的だったのだという。

植物の存在を確認してサンプルを回収したイヴを宇宙船の子機が迎えに来た際にウォーリーも子機の外壁にしがみついて一緒に母艦に向かう。
たどりついた母艦では人間たちが生活しているのだ。
でもって後半は宇宙船内で初代艦長のプログラムで地球帰還を阻止しようとするマザーコンピューターに立ち向かうっていう唐突なバトル展開になる。


急なバトル展開だとか、SF考証おかしいだろとかは子供向け映画だからいいんだけど、僕が一番言いたいのは
「機械風情が人間様の真似事か!」
っていうマジックによくあるアーティファクトを否定する部族みたいなことだった。
ディズニーの動物たちは全体に必要以上に人間臭くて、体も文化も背景も違うんだからここまで人間のような考えは持たないだろ、と思って不気味に感じることが多かった。
ジョジョ3部のストレンクスの本体のサルが不気味なのと同じようなものとも言える。

ミッキーマウスやシャーロックホームズ(犬のやつ)にはさほど「動物風情が!」とはならないから擬人化度合の問題でもあると思う。C3POの方がR2D2より人間らしくても許される感じあるのと同様かな。

あと同じ世界に人間がいないってのも大事だと思ってて、【カーズ】は車がしゃべるし極めて人間臭いけど世界に人間が出てこないことで不気味さを感じさせなくなっていると思う。

一方で攻殻機動隊のタチコマみたいにあえて人間らしい感情を持つようにプログラムしてみることで独自に戦況判断ができる能力を持たせようと試みているっていう設定もなかなか上手いところだ。

とにかくWALL Eの納得いかない点は擬人化度も低い上に、同じ世界に人間がいて、特に理由もなく感情を持っていて、きわめて人間臭くふるまってるのが不気味に感じた点だった。


あれ見てかわいいと思わない(※)どころか機械に対して怒り始める僕の頭の方がおかしいのではと思ってツイートしたところ友人から言われたのは、
「この映画を撮ったアメリカではキリスト教の教えが浸透していて、ロボットを神の移し身たる人間様と間違うような奴はいないため、純粋に『人間の真似をしてかわいいロボット』として受け入れられるのでは」
という旨のことだった。
実際そのあたりが大ヒットやアカデミー賞の理由なのかもしれない。
日本人はモノに心を見出す民族だとよく言われるが、この映画を楽しむことに関してはそれが裏目に出て、「僕人間ですよ」アピールのための演技を煩わしく感じてしまうことだろう。

冒頭で誰もいない地球で黙々とゴミを片付けるシーンだけでもそこに感情を勝手に想像して哀愁を感じてしまった身としては過剰な人間アピール演技が本当に蛇足に感じられた。


(※)見た目は文句なくかわいいと思う。最初に書いたが、何か少し違っていたら本当に好きな映画になっていただろう。

追記:メインターゲットである子供の反応はどうだったんだろう。アメリカの子供は喜ぶとして、日本の子供はどうだったのだろうか。
僕は子供のころ「おさるのジョージ」みて同様にブチキレてたから、当時観てたとしても多分どことなく不気味なものを感じるんじゃないかと思う。

8/4
どっちもそこそこお勧めできる。
監督はどちらもダニー・ボイルで、ロケ地はイギリス。
イギリスの街並みも田舎も本当に美しくて素晴らしい。



【28日後】
こっちはゾンビ(?)映画。
正確には凶暴性ウイルス感染者で、肉体が死んだらもう起き上がらない。
そして集団で走る!
遠くからでも非感染者を嗅ぎつけて全力疾走してくるのは本当に良いシーン。
感染開始の時には主人公は集中治療室にいて、感染開始から28日後に目を覚ましてパンデミックの世界に突如放り込まれるため、既に街には人影がないっていうのも斬新で良かった。
無人の街で、急に遠くからゾンビが全力疾走してくるってのはなんというか、アメリカ映画にはない奥ゆかしさだと思う。
アメリカ人が同じテーマで撮ると絶対街にびっしりゾンビがいる絵を撮りたがるからね。
これだけでも走るゾンビ派の人には見る価値がある。


加えて主人公がしっかり成長していくし、取り巻く仲間が皆いい人たちで応援したくなる映画でもある。
主人公の両親や道中で仲間になった父娘の父親が本当に娘のことを大事にしたまま死んでいくのが悲しい。後半で主人公一味の女性2人が軍人たちのキャンプで騙されて性処理係にされそうなシーンは本当にハラハラするし、自分も殺されかけながら救出に向かう主人公に心から肩入れして映画を観ていた。

後半は避難地での人間対人間になり少々ダレる感じあるなのだが、決着では結局感染者がキーファクターになるのは良かった。

ゾンビ映画にしては珍しく、純粋に希望が持てる形で終わるのも素晴らしいと思う。
あくまでゾンビでなく凶暴性ウイルス感染者であるため、時間が経てば食事ができず餓死するようだ。
多大な犠牲を払ってまでたどり着いたキャンプで非感染者に騙されて、死闘を潜り抜けた上でのハッピーエンドには本当に価値があると思う。


【トレインスポッティング】
ドラッグ中毒仲間たちとの自堕落な生活から脱出しようとする話。
主人公は薬物中毒治療をして堅気の仕事に就くが、ドラッグをやめられない仲間が家に転がり込んで来たり悪い道に誘い戻したりで結局元通りになってしまう。最終的には仲間を裏切る形で大金を手にしてめでたく一人新天地で堅気に戻る。
これだけ書くと主人公が卑劣漢に見えてしまうが仲間に関しては一切同情できない屑揃いだからあまり主人公の評価は下がらない。

ドラッグでトリップした表現や主演のユアンマクレガー(※)の演技がすごく良く、かつ仲間と騒いで楽しむところからドラッグが原因で人生破滅するやつが出てきて疎遠になったり荒んだりする、そして違法な稼業に手を出してまた羽振りが良くなる(が実際はさらに堕ちている)…の繰り返しが日米の不良の人生にも似ててなかなか共感できるところがある。
作品としてはちょっとウシジマくんに似てる。

人々が死体が起き上がって人間に噛みつく様子が観たくてゾンビ映画を観るのと同様に、不良の人生が乱高下するのを観るのを求めて映画を観るライフスタイルがあるんじゃないかって思ってしまう。
特に大震災以来日本で馬鹿の一つ覚えみたいに言われたり作品テーマにされたりしてる「絆」だの「友情」だのに反吐が出てる人にはお勧めだよ。
脱ドラッグ依存のカギはドラッグ仲間との関係を断ち切るところのようだ。

(※)スターウォーズ新三部作のオビ・ワン
【AKIRA】

以前途中まで観てたんだけど、忘れてたからもう一度最初から。
バイクで走るシーンも病院に潜入するシーンもアキラたちの回想シーンや金田と鉄雄が出会ったシーンも全部好きなシーンだった(絵的にもストーリー的にも)。
【AKIRA】に限らず、ずっと守られる側だった奴が急に力を手に入れて「今まで俺を下に見てやがって!」と兄貴分に牙をむくっていう設定は本当に好き。
【博士の異常な愛情】

もうすぐ【時計仕掛けのオレンジ】が高田馬場で再上映されるらしいからその前にキューブリック作品を予習。
分類はコメディ映画だけどストーリーもしっかりしていて、なおかつ登場人物全員頭おかしくてすごく面白い。
こういう登場人物全員キチガイの作品で1,2人出てくる常識人キャラって美味しいよね。
この場合常識人枠の大統領も微妙に頭おかしいんじゃないかって気もするけど・・・

舞台は冷戦下のアメリカで、トチ狂った将軍が独断でソ連に核攻撃を開始したからさあ大変!みたいなストーリー。
タイトルの「博士」がドイツから帰化した科学者で、興奮すると大統領のことを「総統」と呼び間違えたり体が勝手にナチ式敬礼をしようとしたりする、ってだけでも登場人物たちの狂気度が伝わると思う。

カードショップで超痛いやつ・迷惑な奴がいた!って話を聞くと怒る人もいる一方で、僕のように「お!?キチガイ登場か!?どこどこ!?」ってなる人間もいると思うんだけど、後者のような人にこそおすすめの映画。
最近映画をよく見るのでDNに記録をつけていこう。


7月20日
【マッドマックス サンダードーム】
 マッドマックス1,2に比べて話のスケールが小さく、戦う理由もいまいちはっきりしない。2で主人公の相棒役だったジャイロ・キャプテンかと思ったら同じキャストの別人だったり、敵が1,2のような真性の狂人じゃなくてどうもファッションっぽい狂人だったりするのが残念だった。
ターミネーターと同じで 2>1>3 の順で面白かった。
上映中の4に行くか迷ってたところ、ツイッターで「(同じ監督の)【ベイブ2】観てから行くべき」という珍妙なアドバイスを頂き、ベイブは1・2共に好きだった人間としては凄く気になるようになってしまった。


【死霊のはらわた】
 ホラーの有名作品だったから観たけど、これもあまり気に入らなかった。不満点は映像が古いとか不当にグロいとかじゃなく、主人公一味があまりにトロいことにイラついて本筋どころじゃないって点だった。第一の犠牲者が出た後でも部屋でバラバラに寝る・悲鳴が聞こえても走らずトロトロ様子を見に行く・その割にドアは不用心に開ける・夜明けを待たない・とどめを刺さない と生き残る気あるのか怪しいレベル。
特殊部隊でもない一般大学生だから【ドーンオブザデッド】みたいに訓練されてろとは言わないけど、【ゾンビランド】くらいには生存の努力を見せてほしかった。

肝心のゾンビ(?)や死霊は迫力あって良かった(僕はゾンビは走る方が好き)。
何故かカラフルなクレイアニメの臓器も好きだよ。


【プライベートライアン】【タンタンの冒険】
 大安定のスピルバーグの作品でどっちもすごく良かった。それぞれ戦争もの・CGアニメだけど、ワクワクする冒険やちょっとしたユーモアが凄くスピルバーグっぽいと思う。
プライベートライアンはライアンがいい奴で本当に救われた感じがあるよね。
タンタンはポップな絵柄の原作をリアルなアニメにするとかなりエグい描写が合ってちょっと笑った。


【シカゴ】
中学生のころに観てすごく好きでサントラも買ったミュージカル映画をもう一度。
歌もキャラも超かっこいいよね。当時は殺人見て喜ぶ群衆の気持ちはわからなかったけど大人になると結構わかる。



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