ハヤバイ/Skitterskin の翻訳考察
各所で話題のSkitterskinの翻訳。

否定的だったりただのお笑い枠だとする感想がある中で、僕はこれは近年屈指の名訳だと思っているのでその理由を書いておきたいと思う。


絵やカードテキストを見ての通り、ハヤバイはゼンディカーに現れたエルドラージのうち小型~中型の種である。
エムラクールやウラモグはもちろん、ウラモグの破壊者や背くものよりもさらに小さい生物であり、おそらくはそれらよりさらにあの世界にありふれた存在なのだと思う。

"Skitter"の名の通り比較的小型な体躯で素早く移動して同盟者や地元民に襲い掛かるSkitterskinは彼らの日常の中で頻繁に起こりうる脅威だ。
数は多いものの破壊者や背くものほど強くないため、同盟者たちにもなんとか退治可能なレベルであり、同盟者たちは日々Skitterskin級のエルドラージと戦っていることは想像に難くない。

そんな小中エルドラージの中でもSkitterskinは再生を持つ粘り強さと素早さとで、同盟者にとってはギリギリ日常的なレベルの危険なのであろう。
進撃の巨人で言うと奇行種くらいの数と厄介さをイメージしてほしい。超大型巨人や鎧の巨人はレアや神話レアのエルドラージくらいの希少さだ。

同盟者たちが小型エルドラージの大群と戦っている中で突如駆け込んでくる姿― それが4/3再生の厄介な野郎なのであろう。
当然同盟者たちは大声で味方に注意をする。「右翼にSkitterskinだ!」と。
あるいは山間部で隠れるように暮らしていた集落の住人が叫ぶ。「助けてくれ!Skitterskinだ!」と。



そしてこれは想像なのだが、Skitterskinというのは前線の兵士や地元民が名付けた名であるのではないだろうか。
現場の兵士たちにとってはSkitterskinの数や位置を把握することは死活問題であるため、言いやすく端的に特徴を示した名前を早急につける必要があったのだ。
彼らは学者でも参謀でもプレインズウォーカーでもないため、「二又の腕を持つからこいつはウラモグの眷属、そして破壊を担当しているから『ウラモグの破壊者』だ」などという冷静なネーミングはしないと考えられる。

そして絵を見る限り"Skin"要素は見当たらず、SkinはSkitterと頭韻を踏んだだけで「野郎」くらいの意味合いだと考えられる。
戸田奈津子風に言うなら「スキッター野郎」ってところだ。

"Skitter"の訳出をきちんとしたうえで、いかにも地元民や現場の兵士が名付けたと思われる呼びやすさ、忌々しさを含んだちょっと愉快なニュアンスのすべてが揃った訳「ハヤバイ」。これを名訳と呼ばずして何を名訳と呼ぼうかというレベルの訳だと思っている。


「出たぞ!右翼にハヤバイ3体だ!対処に回れ!」 と声に出して同盟者ごっこをしてみよう、きっとこの訳が素晴らしいと感じるだろう。



他のありそうな訳

「走り回る皮膚」
(テンプレ訳。もはや何が何やら… 獲物から剥いだ皮膚の集合体なのか?)

「コバシリ」
(ハヤバイと同系統。ただし、「小走り」は"Scuttling"のテンプレート訳になっているので避けたのかもしれない。"Skitter"のテンプレート訳は「走り回る」だ。)

「小走り野郎」 
(戸田奈津子っぽさが出てしまい、ちょっと不自然か。僕は結構好きなんだけど、日本のフィクションでは「ジガバチ」(攻殻機動隊)やら「羽根つき」(ガンダムOO)やらのシンプルな通称の方が馴染みがあるようだ)

「馳せ皮」
(長谷川。舞台が日本だったらある種面白いような・・・でも日本語だと「皮」である必要がないからね・・・)


追記 カタカナである理由

「シュラバザメ」のように動物の種名っぽさを出すためだと思われる。
これは原文にはないが素晴らしい判断の訳だと思っていて、原意に沿ってカワハギ(魚)を「皮剥ぎ」と書いたりゴキブリを「御器齧り」と書いたりはしないようなものだと言える。
ハヤバイがそれだけゼンディカーの人々にとってありふれた存在であり、「ハヤバイ」という言葉から彼らは「速く這うもの」ではなく「4/3の再生持ちのアイツ」を思い浮かべることも含意されている。

それと細かい上にメタ的なところだと、アンチャーに登場したときに「速這い」だと他の動詞や形容詞に埋もれる可能性があることも避けたかったのだと思う。

コメント

風見
2015年9月2日13:25

馳せ皮・・・指輪っぽい訳ですね。
ただその精霊信者の剣も~~丸になりかねないw

汐宮キャロル
2015年9月2日13:54

>風見さん
馳せ男とかつらぬき丸とか結構好きな訳ですw

煙突エンジン
2015年9月2日15:30

ハヤバイって名前いいですよね、厳かな名前の巨大エルドラージと違って地元の人たちがよく遭遇して対処にも慣れた強さだってことがよくわかる感じがするし。

どうでもいいけどこういう民族っぽい名前、ローウィンならわかるけどゼンディカーの場合どの民族がつけた呼称なのかすっごい気になる。ゼンディカー自体あんま文明進んでなさそうだし誰がつけてもおかしくないけど、コーの民が狩りの最中に初めて遭遇して…みたいなストーリーが見たい。。

汐宮キャロル
2015年9月2日15:41

>色盲さん
種族はわからないけど、BFZで再結集した同盟者の方々かな、って想像しています。
レジェンドじゃないキャラメインのアンチャーのボスキャラとして出てきそうなレベルですよね、ハヤバイ

ハリー
2017年3月13日12:10

馳せ皮いいっすねぇ

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